有料英語教材と無料学習教材の効果的相互利用法
これまでは主に英語学習方法について論じてきましたが、本項では趣向を少し変えて英語学習教材について考えてみます。
と言っても、ここではどのような英語学習教材が優れているのか、という話ではなく、「有料」教材と「無料」教材、平たく言えば、お金の話です。
なぜここでこんな話を持ってくるのかというと、英語学習を語る上で、金銭の話は避けて通れないテーマだからです。
ネット上に溢れる無料教材
古来、英語は金のかかるものでした。一昔前には、何の変哲もない英会話学習セットが50万で売られていたということもありました。
しかし、21世紀を迎えた現代、この状況は大きな変化を迎えています。一昔前では考えられなかった現象、インターネットの発達により、あらゆる分野で「無料」のサービスが簡単に手に入る時代になったのです。
英語も例外ではありません。例えば、『Yahoo! TOEICデイリーミニテスト』では、毎日TOEICのリスニング・リーディング問題がそれぞれ一問無料で提供されています。
無料メールマガジンでもTOEICや英検などの問題や、会話、語彙、リーディング等の英語学習教材が提供されています。英字紙もネットで読めますし、ストリーミング放送でニュースなども無料で見ることができます。
もちろん、ほとんどの場合無料で提供されているものにはその裏があります。販促のためだったり、広告収入を当てにしたものだったりと、理由はさまざまです。
例外として、個人が運営しているサイトの中には純粋に趣味でやっているものもあります。
ではこれらを利用すれば、もう英語にお金をつぎ込まなくてもいいのでしょうか?
痛みを伴わない「無料」教材
私はこれについて否定的に考えています。
もちろん、これら無料サービスを否定するつもりはありません。わたしも利用しています。しかし、悲しいかな、人は無料で手に入れられるものに対して執着を持ちにくいのです。
たとえ途中で放棄しても懐は痛くありません。もともと無料なのですから。このため、タダだったからなんとなくはじめたけど結局続かない、ということがよくあります。
一方で、大金をはたいて手に入れたものはそうはいきません。大金をはたくことは、それなりの目的意識がないとできないことです。
資産家でもないかぎり、「なんとなく」10万も20万も使うことはありません。英語を身につけることにそれだけの価値がある、と考えて投資するわけです。
この目的意識が英語学習において大きな意味を持ちます。英語を身につけることができる人は、おしなべて強い目的意識を持っているためです。
この要素は英語の「才能」等よりもずっと重要です。英語の才能がなくても英語は身につけることができますが、目的意識のない人は、たとえ英語の才能に溢れていたとしても、英語を身につけることはできません。それくらい重要なのです。
背水の陣
お金を使うことは学習者に決断を促すことです。金額が大きくなればなるほど大きな決断を促す効果を持ちます。
この決断が目的意識を刺激します。大枚をはたいたのだから、上達しないわけにはいきません。いわば背水の陣を敷くようなものです。逃げ道はありません。勝つしかないのです。
大きな金額のサービスを購入したら、その領収書を目に付くところに貼っておいてください。常にそれを見て、目的意識を呼び覚ますのです。
サービスの質
また、有料サービスを利用する利点は他にもあります。あたりまえですが、有料サービスの方がサービスの質はずっと良くなります。
サービスの質が良くなれば学習効果も高くなります。時間当たりの学習効果が高くなれば、より短期間で英語を習得することができるようになります。
より短期間で英語を習得することができれば、英語習得後に得られるであろう収入の増加を、より早くから得ることができるようになります。
月あたり3万でも、1年で36万になります。1ヶ月1万円の有料サービスを2年利用したとしても、学習期間を1年短縮できれば、12万円の利益になるわけです。
有料サービスを利用する場合は、時間を買っているんだ、という意識を持ってください。
忙しい現代人、特にビジネスマンにとって時間は貴重です。時間を買うことができるのならば、それを惜しむ必要はありません。
自分への投資は消費ではありません。投資した以上の利益を得るための行為です。これだ、と思ったものには思い切ってお金を使ってください。その決断が、英語習得の原動力となるのですから。
有料サービスの利用
一口に有料サービスと言っても金額はまちまちです。月々数百円で済むものもあれば、1万円を超えるものもあります。
ところが、高ければ高いほど教材やサービスの質がよくなるかというと必ずしもそうとは限らないところに英語学習サービス購入の難点があります。
PCなどは高ければ高いだけ性能も良くなりますが、英語教材・英語学習サービスについては価格設定が恣意的なので、同等のサービスでも万単位で価格が異なってくることも珍しくありません。
例えば、NHKの英語テキストはよくできていますが、価格は低額に抑えられています。もちろんこれは公共放送という側面がありますが。
価格が高くなれば上述の決断を促す効果は高くなるでしょうが、金額の多寡による心理的効果は人それぞれなので、ただ闇雲に高額なサービスに飛びついても、期待した効果を得ることを保証することはできません。
人によっては月300円でも大きな効果がありますが、何十万とつぎ込んでもたいした効果を得ることができない人もいます。
もっともこれは性格によるものなので、学習者本人が一番よくわかっているのではないでしょうか。
自己分析は英語学習計画の必須項目です。この点についてもよくよく考えてから計画を立ててください。
サービスの組み合わせ
学習者の経済力にもよりますが、個人的には多少高額でも優良なサービスを一つ利用し、その上で各種無料サービスを補助的に利用していく方法が望ましいと思います。
学習の柱となるものに資金を集中させ、部分的な不足分を無料で済ましてしまえばいいのです。
無料サービスではサポートに限界があるので疑問に思った部分を確認することは難しいのですが、別途有料サービスを利用していれば、無料サービスの中で疑問に思った部分を質問することも可能です。
経済性の観点から英語学習について語るのなら、一刻も早く利益を生むレベルまで英語力を高めることです。
何でも無料で済ましてしまうのではなく、有用なものにはお金を使ってください。それが結果的に安上がりになることになるのですから。