自己分析
「英語学習法の乱立とその原因」でさまざまな英語学習法が存在する理由を考えてみましたが、この分析はこれから英語を始めようとしている人、または既に始めている人でも、英語学習法を構築するには欠かせないものとなります。
現在の英語力
まずはこれまでの英語歴を振り返ってみましょう。
第一のポイントは受験英語を経験しているかどうかです。なにかと批判の多い受験英語ではありますが、経験しているのとしていないのでは雲泥の差があります。
受験英語を経験している人は文法的知識が豊富で、語彙力も偏りはありますが、かなりのものがあります。特にいわゆる難関校といわれる大学に合格している人は、すでに相当程度の英語力を持っています。
このようなタイプの人は、受験英語を経験していない人に比べ断然有利です。一方、受験英語を経験していない人、いわゆる社会人になってからの「やりなおし英語」の場合、英語習得への道はかなり険しくなります。
また、この他に注目すべきものとして、洋画鑑賞があります。洋画を英語のまま楽しむのが好きな人の場合、他の人と比べリスニング力が断然高い場合があります。
この他にもいろいろなパターンがあると思いますが、いちいち挙げるとキリがないので、ご自分で考えてみてください。
性格的要素
性格分析も重要です。以下に英語を学ぶ上で有利な性格と不利な性格について、思いつくまま列挙しますので、参考にしてください。
有利な性格
1.持続力がある
英語は2、3日で身につけられるものではないので、どうしても持続力が必要になります。これは、英語に限らず、習い事をするには不可欠なものです。
持続力に欠ける方は明らかに不利ですが、やる気を起こさせる方法もいろいろ研究されています。持続力に自信のない方は事前に調べておくといいでしょう。
2.積極的
これもよく言われるものです。積極性については会話の上達に大きな影響を及ぼします。言い間違えるのを恐れて話さなかったら、会話は上達しようがありません。
一般に英語学習において日本人は積極性に欠けると言われていますが、これはほんとうにもったいないことです。
私は留学中、自分から積極的に話しかけていくように心がけていました。傍から見たらナンパしているようにも見えたそうですが。(^_^;)
一応念のため言っておきますと、別に女性を狙って話しかけていたわけではありません。外国語大学だったので、女性の割合が大きかっただけです。
それはともかく、それによって友達も増えましたし、学習書では学べないことも知ることができました。
英語を身につけたいなら、英語を使う機会に貪欲になることです。これが上達の早道となります。
不利な性格
1. 完全主義
何事も徹底的にやる人たちです。一見語学に向いてそうですが、実はそうではありません。
例えば、完全主義者はテキストにせよ、単語本にせよ、すべてやり切らないと気がすみません。別にもっと効果のあるものがあっても、とりあえず残りをやりきってからでないと移ろうとしません。
またよくパターンとして、会話の際、文法に気が行き過ぎて話せないというものがあります。結局満足に話せずに終わり、上達の機会を失ってしまいます。
「完全」の対象を変えればいいのですが、どうしても細かいところが気になってしまいます。ちなみに私も該当していました。
2.几帳面
完全主義に似ていますが、多少相違点があるので別扱いにしました。几帳面な人の問題は、本来の目的から外れて、どうでもいいことにこだわってしまうことです。
例えば、単語帳を作るのは単語を憶えるためですが、几帳面な人は単語帳を作っているうちに、単語帳を作ることに熱中してしまいます。
そのうち単語帳を作成することが目的化してしまい、単語帳を完成させることで単語ま憶えたように錯覚してしまいます。
3.理系型
言葉は人間の思考や感情を伝えるものなので、理屈だけで割り切れるものではありません。
ところが理系型の人は物事を理論的に考えますので、英語についても理論で割り切ろうとする傾向があります。
理系型の人が外国語を勉強する場合、英語は文法事項にのっとって、単語を埋めていけばいいという発想をします。
しかしながら、実際には言葉はそんなに単純なものではありません。例えば、言葉は全く同じ表現でも、イントネーション、使用する場面等によって全く正反対の意味になります。一昔流行った「ほめ殺し」はその典型でしょう。
なお、女性の方が語学に向いているといわれるのは、この点が大きく影響しているものと思われます。男性は理系型が多いからです。
言葉は人の思考や感情を伝えるものなので、すぐれて人間的なものです。そして、この人間の思考や感情はアナログなものです。
0と1だけで割り切れないところに、言葉の難しさと、面白さがあると私は考えています。
学習環境
学習環境は学習法構築において極めて重要な要素になります。
第一の要素は時間です。「英語を始める前に」で英語の習得には約5000時間必要になることに言及しましたが、英語の習得にはどうしてもそれなりの時間が必要になります。学生の場合は比較的時間がありますが、社会人で、特に仕事が忙しい人の場合は、学習時間の確保が大きなポイントになります。
もちろん多忙な社会人でも英語をマスターする人がいます。これらの人たちに共通に言えることは、時間の使い方が上手だという点です。
このような人たちは細切れの時間を有効に使います。いつ、どこにいても、2、3分でも勉強できるように、常に勉強道具を常備しています。
通勤時間は言うに及ばず、風呂、トイレの時間も勉強します。このタイプの人は集中力が並外れていて、強烈な目的意識があります。
反対に時間が豊富にある人の場合は、逆に集中力を維持するのが難しくなり、結果効率が悪くなるパターンも見受けられます。
外国語に接する機会がある仕事をしているような場合は学習上非常に有利です。したくてもできない人も大勢いるわけですから、このような機会は大切にしてください。
また、昇進基準や海外派遣の要件としてTOEICのスコアが設定されていたり、また語学が必要になるような仕事への就職・転職活動を行っている場合、これらは学習意欲を支える大きな力となります。
このような明確な目的のある人とそうでない人を比べると、上達速度の差は顕著です。
留学する場合は、国内で勉強するよりも断然有利な環境を手に入れることができます。もちろん留学しなくてもマスターできますが、時間及び金銭面で留学可能なら留学することをおすすめします。
国内では覚えるのに苦労するようなことでも、すんなりと身につけることができるのが留学の利点です。「百聞は一見に如かず」といいますが、英語についても同じことが言えます。
さらに、生活的、習俗的側面を肌で感じることは、その国の文化や、その国の人々の思考方法を理解する上で大変有利です。
ただし、留学する場合ある程度日本で勉強してから行くことをおすすめします。目安としてはTOEICで730点以上取得してからでいいと思います。この点については後に稿を改めて考えてみたいと思います。
英語を勉強する目的
「英語を始める前に」で本当に語学を勉強する必要がなければしない方がいいと述べました。
このページを読まれている方は、皆それぞれ英語を勉強する何らかの目的があるものと思います。目的は人それぞれだと思いますが、今思いつくだけ列挙してみたいと思います。
- 海外に赴任することになった
- 国内勤務だが業務上語学が必要
- 英語を使用する仕事に就きたい
- 昇進に必要
- キャリアアップのため
- 留学する
- 旅行先で使いたい
- 英語が趣味
- できるとカッコいい
まだまだあるとは思いますが、いずれにせよ、英語の用途がはっきりすると、到達すべき英語能力及び言語の四分野「聞く・話す・読む・書く」において、それぞれどの程度の運用能力が要求されるかがはっきりします。
英語は道具
英語はあくまでも目的を達成するための道具です。
たとえ英語を使用する仕事に就くのが学習の目的でも、仕事についてからは英語を使って要求される仕事を完成させる必要があるので、結局英語は目的を達成するための道具となります。
逆に言えば、目的を達成するだけの能力があれば事足りるわけで、仕事上必要とされな分野の能力はなくても差し支えありません。
例えば、旅行好きで、旅行先で買い物や観光、あるいは知り合った人とおしゃべりを楽しみたい、というのが目的である場合、重要になるのは「聞く・話す」の能力となり、読書きの能力は特に重要ではありません。
一方、学術関係で語学が必要になる場合、論文を読んだり書いたりすることが主になってきますので、「読む・書く」の能力がより重要になってきます。
仕事で使用する人の場合、どのような仕事に従事するかによって大きく変わってきます。
電話を受けるだけでしたら「聞く・話す」の能力だけでも十分ですが、メールのやり取り等もする場合は「読む・書く」の能力が必要となります。比較的低い語学力でも対応できる仕事もあれば、かなり高度な語学力を要求されるものもあります。
英語専門職(通訳・翻訳)の仕事に就く場合は、更に高度な英語力が必要になります。また、通訳と翻訳では全く異なった方面の能力を要求されます。さらに、翻訳の場合日本語に訳すのか、英語に訳すのかで全く異なってきます。
なお、英語専門職の場合、英語力は当然の大前提で、それ以外の能力(通訳・翻訳技術/専門知識)がより重要になってきます。
やめる勇気も必要
勉強を始める前に、目的を達するためにはどの方面の能力がどれだけ必要になるか調べみてください。そして実際に成功した人の例を集め、自分に可能かどうか検討してください。
もし時間的、性格的、その他の諸条件から不可能と判断した場合は、計画自体を放棄したほうが無難かもしれません。
放棄といっても、語学習得の目的が趣味のレベルなら気楽なものですが、仕事で使用する計画だった場合は、人生設計そのものを変更する必要に迫られます。
とはいっても、大量のお金と時間をつぎ込んだ上で失敗して後悔するよりはずっといいでしょう。道は他にいくらでもあるのですから。