多聴学習の問題点とその対策
多聴で有名なのはアルク社のヒアリングマラソンでしょうか。1日3時間、1年で1000時間聴けというやつです。私は使用したことはありませんが、それなりに高い評価を受けているようですね。
1日3時間ですから、それなりの覚悟がないとできないと思います。と言うよりもこれをやり遂げるだけの意思があれば、遅かれ早かれ英語を身につけることができるでしょう。もっとも1日3時間1年やり通して効果なければ訴訟ものでしょうが。
多聴を行うにあたって最大の壁となるのが長期間にわたって「継続」することの難しさではないでしょうか。
聴き取れるならまだしも、聴き取れないものを何時間も聴き続けるのは普通の人にとっては苦痛以外の何物でもありません。英語で挫折する人が多い原因の一つはここにあります。
逆に言えばこれを乗り越えることさえできればで挫折する可能性は大幅に減少するわけです。
ということで、ここでは多聴学習に伴う苦痛を最小限に抑える方法について考えてみます。
如何に継続するか
多聴においてポイントとなるのが「継続」にあり、それを困難にしているものが「聴き取れない」ことにあるならば、少しでも聴き取りやすい状況をつくりだせるのならば継続できる可能性が高くなるのではないでしょうか。
まずは聴き取れない原因を挙げていきます。それから順次対策を考えていきたいと思います。
聴き取れない原因
- 発音が難しい
- 単語を知らない
- 速度が速い
- 集中力が続かない
まだあるかもしれません。とりあえず今思いついた限りでは上記のようなものでしょうか。まずはこれらに対して対策を考えてみましょう。
発音が難しい
以前発音編でも紹介したお話ですが、日本語の発音構造と外国語のそれには大きな違いがあります。正しい英語の発音を習得していない段階で多聴を行なっても終始聴き取れないまま終わってしまいます。多聴を始める前に正しい発音を学習しておいてください。
単語を知らない
なるべく簡単なものを使用してみてはどうでしょうか。例えば、子供向けの番組の場合、使用される語彙は限られてきます。
発音のせいで聴き取れないということはあっても、語彙力が乏しいから聴き取れないということはなくなると思います。
速度が速い
速度が速く聞こえるのはリスニング力が低いためです。これからリスニング力をつけていくのですから早く聞こえるのは当然です。
リスニング力の上昇につれて速度は気にならなくなりますが、一つ注意しておくことがあります。
どれだけ勉強してもリスニングの速度が速く感じられる方は頭の中で日本語訳をする傾向があります。これは学校英語の弊害なのですが、訳して理解している限り速度にはついていけません。
この状態から脱却するには日本語訳癖を直す必要があります。学校英語に染まっている方ほど癖が抜けないようですが、コツをつかめばすぐに直ります。
この件については英語脳をつくるで詳述していますので、別途ご参照ください。
集中力が続かない
たとえリスニング力が高くても、1時間も2時間も聴き続けることはやはり容易なことではありません。いわんや、ほとんど聴き取れない状況でも何時間も聴き続けることができること自体がほとんど一種の特殊技能です。
しかし、これを克服しなければリスニング力の向上は望めない以上、なんとかしなければいけません。
集中力の問題は英語学習効果そのものにもかかわる問題なので事は重大です。この項目の対策については具体的な方法論と共に考えていきたいと思います。
継続する時間を短くする
まとめて何時間もやるのではなく、10分なり20分なりと時間を区切って分散する方法があります。例えば、10分リスニングをしたら風呂に入るとか、20分聴いたら夕食にするとかです。
また、はじめから時間を指定しておくという手もあります。例えば10:00から10:30まではリスニングの時間と決めておき、習慣化するというものです。
このようにすると勉強にメリハリが出てくるので、時間当たりの学習効果が向上するという利点もあります。
リスニングしかできないような環境を利用する、もしくは作る
自分の部屋で勉強する場合、周囲には誘惑がたくさんあります。TV、インターネット、マンガ等々…。ふと集中力が切れたとき、なんとなくつけたTVに見入ってしまうことは誰でもよくあることです。
学習のためにはこれらの誘惑を断ち切る必要があるのですが、断ち切る方法は何も我慢するだけではありません。これら誘惑のない世界で勉強すれば、誘惑に負ける心配なんていらなくなります。
例えば、サラリーマンなら通勤電車の中でテープを聴くことができます。通勤電車の中ではできることが限られていますので、かえって集中できるものです。
また、営業で外回りをされている方は移動中の時間を利用することができます。(※注:車で回られる方は運転に注意してください)
通勤や営業で車を使用されている方は赤信号集中法が効果的です。文字どおり赤信号などで止まっている間集中してリスニングをします。止まっている時間は長くても2分程度なので、集中力が途切れる心配はいりません。
おまけに普段はいらいらしい赤信号も待ち遠しい勉強の場となり、まさに一石二鳥です。
また、主婦の場合家事をやりながら聴くことができます。とにかく耳さえ空いていればいいのですから。
これらのような既存の状況を利用する以外に、人工的にこのような時間を作ることもできます。例えば、リスニングに必要なものだけを持って公園に行くのも効果的です。
じっとしているのが落ち着かない方は散歩や軽いジョギングをしながら聴くのもいいと思います。
外に出たくなければトイレに籠るのもいいかもしれません。家族から苦情を受けるような場合は部屋で柔軟体操をしながらでもいいと思います。まだまだあると思います。いろいろ考えてみてください。
興味のある分野についての素材を利用する
何の興味もない分野について聴いていても何も面白くありません。日本語で考えてみてください。聞く気になりますか?
いわんや、英語で聞くなんて退屈以外の何物でもありません。こんな状況で何時間も集中して聴き続けるなんてほとんど拷問です。
逆に言えば、自分の興味のある分野については人は自ずと耳を傾けます。おまけに興味のある分野については予備知識が豊富なのでより聴き取りやすくなります。
聴き取れるようになるとリスニングが楽しくなってきますので、長時間でも続けることができるようになります。
おすすめはスカイパーフェクTVやケーブルテレビ等で視聴できる英語放送です。私も日本国内にいたときはスカイパーフェクTVを視聴していました。
歴史が好きな方はヒストリーチャンネル、科学系が好きな方はディスカバリーチャンネルがおすすめです。もちろんCNNやBBCも視聴できます。
CNNやBBCのニュースは政治的、歴史的、地理的な要因から中近東のニュースが多くなっています。
一時期はBBCをつけっぱなしにしていましたが、爆弾テロで何人の犠牲者が出た、というニュースを一日中聞き続けてブルーになって以来、経済ニュース専門のブルーンバーグを聴くようになりました。ビジネスマンの方にはCNNやBBCよりもおすすめできます。
個人的な話になりますが、ドキュメンタリーはBBCが断然いいです。思わず見入ってしまう番組を制作してきます。
一方最近CNNはほとんど見ていません。TOEICはアメリカ英語なのでTOEIC対策にはCNNの方がいいのかもしれませんが、個人的にどうも肌が合いません。日本で英語を勉強されている方の多くがCNNを視聴しているようですが、みなさんどうなんでしょうか。
話は戻りますが、リスニング力が低い場合、これら映像付きの素材を利用することは大変有効です。目からの情報によってある程度状況や内容を確認できますので、より聴き取りやすくなります。
リスニングは目に頼ってはいけないと強調される方もいますが、「多聴」を行う場合は耳のみで聞きとることに過度にこだわらなくてもいいと私は考えています。