TOEIC攻略法

TOEIC批判

TOEIC、TOEFL、英検の中で、現在日本で最も広く通用しているのがTOEICです。TOEFLや英検資格を持っている人が就職面接でTOEICに換算するとどのくらいのスコアになるのか聞かれたこともあるそうです。また、一部企業では昇進査定の要件としてTOEICを使用しているところもあります。

このように広く支持されているTOEICですが、英語教育に携わる専門家の一部からTOEICに対する批判を耳にすることがあります。

その批判とは、「TOEICは受験者の英語力を正しく測定できていない」、と言うものです。TOEICはリスニングとリーディングのみでスピーキングがないので、TOEICで高得点を持っていても会話ができるとはかぎらない、という主張です。

これに対して、ETS側は

「ListeningとReadingという受動的な能力を客観的に測定することにより、SpeakingとWritingという能動的な能力までも含めた、英語によるコミュニケーション能力を総合的に評価できるように設計されています。」

と述べています。

リスニングとスピーキング、リーディングとライティングの相関性

私は基本的にはETSの主張に賛同しています。リスニングとスピーキング、リーディングとライティングにはそれぞれ一定の相関関係があり、リスニングとリーディングの能力からスピーキングとライティングの能力を測ることは、ある程度は可能だと考えられるからです。

一方、教育の現場で日々学習者に接している先生方の主張も一理あります。先生方の指摘どおり、TOEIC高得点者の中にも、会話はできないという学習者は少なからずいることは確かです。

しかし、私はこの批判を無条件に受け入れることはしません。それは、この批判が一つの資格試験で学習者の英語力全体を測ろうとする幻想に基づいていることです。

万能試験の非現実性

先にも述べましたが、一つの試験で学習者の語学力全体を測ることは事実上不可能です。 仮にそのような試験を作成した場合、受験費用は相当高額のものとなります。

TOEICに比べTOEFLの受験費用が高いのはライティング試験が含まれているからです。スピーキングとライティング試験については機械で判断するのが困難なので、どうしても人手が必要になります。そうなれば経費がかさむのは当然で、そのしわ寄せは受験者に転嫁されます。

またスピーキングとライティングには、一般にリスニングとリーディングより高い英語力が要求されます。これら能動的な運用能力を測るに値する受験者の割合は、実のところはごく一部に限られます。

英検のような級別の試験ではなく全受験者共通の試験なので、受験者のレベルに合わせてスピーキングやライティング試験を課すことができないのです。

TOEICのスピーキング試験

あまり知られていないのですが、TOEICにもスピーキング試験が別途用意されています。Language Proficiency Interview (LPI) というもので、11段階で評価されます。

TOEIC公式サイトでは、

「フリーカンバセーションを通じて、発音、文法、語彙、流暢さ、理解力などがチェックされますが、評価はこれらのプロセスを経て総合的に行われます」

と説明されています

受験資格はTOEIC公開テストで730点以上のスコアを取得することで、受験料は13,000円と高額になっています。難易度は相当高いらしく、英検の2次試験とは比べものにならないほど厳しく採点されるようです。

試験結果には厳しいコメントがついてくるようなので、会話力に自信のある方は一度試しに受けてみるといいかもしれませんね。

TOEICの意義

話を戻しますが、このLPI試験の受験資格がTOEIC公開テストで730点以上のスコアを取得している人に限られているところに、ETSの姿勢がよく表されていると思います。

つまり、「TOEICで730も取れない人の会話力は、資格として測定する価値はない」、ということです。

資格は社会の需要に応じて生れるものです。TOEICの場合ビジネス界を強く意識したものとなっています。ビジネスの世界は金銭が絡むので、失敗が許されない世界です。

この世界で通用するにはTOEICの730は最低の最低限のレベルで、これすら到達できないようでは、ある程度責任の伴うビジネスでは使い物にならないということです。

TOEICで730も取れないようでは、いくら流暢に会話できているように聞こえても、その信頼性には欠けるものがあります。逆に、TOEICで高得点を持っている人は、正しい練習法で会話訓練を行えば、比較的短期間でそこそこまともな会話ができるようになります。

個人的には、TOEICで730をクリアしてから会話練習をはじめても遅くはないと考えています。英語力の低い段階で英会話学校に通っても満足な会話はできず、その一方で勉強した気になってしまいがちです。

このため上達が遅れるばかりでなく、大量の資金をつぎ込んでしまい、貴重な資金と時間の両方を失ってしまう結果に陥る可能性もあります。

また、TOEICで730を取得するにはそれ相応の勉強量が必要になるので、それなりの覚悟が必要になります。730をクリアしてから英会話学校に通う場合は、その時点で比較的明確な目的を持っているでしょうから、挫折することも少なくなるでしょう。

事前にハードルを設けておくことで、衝動的に英会話学校に入校したけど、結局続かなかった、という悲惨な結末を回避できるのではないでしょうか。

英語マニア

TOEICを批判するもう一つの勢力は、高度な英語力を持つ、いわゆる「英語マニア」な人たちです。

批判の理由はTOEICが「簡単すぎる」こと。先にも述べましたが、TOEICは900を超えるとスコアで学習者の英語力を的確に示すことが難しくなります。

TOEIC900の実力

TOEIC900とは「専門分野+英語」として英語を学習する人にとっては一つのゴール地点と言えますが、「専門分野=英語」として英語を学習する人にとってはスタート地点に過ぎません。

英語専門家として英語を使用するものにとって、TOEICスコア900は富士登山の五合目でしかありません。五合目まではバスで行くことができます。そこから自分の足で頂上に向かって登っていくのです。

だいたい私を見てもわかるように、435からスタートして2年そこそこで900に届くのですから、その難易度は一般に考えられているほど高くはありません。

TOEIC を簡単すぎると批判する人たちはそこに不満を持っています。TOEICが自分の高い英語力を正確に表してくれないのです。スコア上では自分よりはるかに低い英語力しかない人と大差がなく、区別がつきません。

英語マニアな人たちは、常に自身の英語力の向上に腐心しています。そしてそれに見合う敬意を社会から受けたいと願っています。そういう意味では、客観的に数値で表してくれる資格試験は重要です。ところが、その肝心の資格試験が簡単すぎて、自分の英語力を正確に表してくれないのです。

資格試験の意義

言うまでもありませんが、こんな人たちはごくわずかです。そして、TOEICはこんな人達のために設計されている訳ではありません。資格試験はあくまで資格試験です。資格試験を絶対視するのではなく、あくまである一面から学習者の英語運用能力を測るものだ、ということを忘れないでください。

そして一日も早くTOEICを卒業しましょう。自分に必要とされるスコアを達成したら、TOEICのことなど忘れて、さっさと次のステージへと飛躍しましょう。

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