TOEIC「超」短期間スコアアップの幻想
本屋などでTOEIC900以上のスコアを超短期間(6ヶ月以下)で取得したことをうたう本を見かけることがあります。また、よく通信教育や語学学校の広告等で、2ヶ月や3ヶ月といった短期間でTOEICのスコアが200点伸びたという体験談が紹介されています。
このような現象はどうして起こるのでしょうか。何か魔術的な勉強法か、或いは受験テクニックでもあるのでしょうか。
答えは、残念ながら「ない」です。このような超短期間のスコアアップには明確な理由があります。
エリートの学習法
まず前者のケースを考えてみます。このような本を書いている著者は、そのほとんどが一流、超一流といわれる大学を出ているエリートです。このタイプの人は初めてのTOEIC受験で、何の準備もなしに700や800を超えるスコアを記録します。そして2回目ないしは3回目に受験したテストでTOEIC900をクリアしています。
これらの本では、この間に著者の方が実践した方法が究極の勉強法であることを滔々と述べていますが、スコア急伸の要因は学校教育の中で身につけた英語力によるもので、平たく言えば、ただ単に試験慣れしただけです。
これらの本で推奨している勉強法は、TOEICで400前後の人にはまったく真似できないものだったりします。逆に言えば、学習者自身も著者と同じような経歴を持っている場合は、著者の提唱する方法で著者と同じような結果を得ることができる可能性があります。
一方、「学校では英語が大嫌い、文法などすっかり忘れてしまった」、という方には向いていないので注意してください。
後者のケースも前者と似ているところがあります。主にTOEICのポイントがつかめていないために本来の英語力に比べ低く評価されていた学習者が、専門学校などでTOEIC対策方法を学ぶことにより、「本来の自分の英語力」が発揮されるパターンです。
この場合も受験者が事前に持っている英語力によって得点の上がり方が変わってきます。人によっては200点ぐらい跳ね上がる場合もあります。
過小評価
これらのケースを見ても分かるように、超短期間でTOEICのスコアが跳ね上がるのは、その大半が試験慣れしていないことによります。
TOEICは処理速度を重視する試験なので、正確さを重視する従来の学校英語の延長で受験すると、とんでもなく低く評価されてしまいます。
TOEICに限らず、試験にはそれぞれ個性があります。資格試験は受験者の語学力を測るものですが、今のところ全面的に測定する試験は存在しません。資格試験は必ず何らかの角度から受験者の英語力を測定します。
このため、その試験のもつ特徴を理解することで、はじめて自分の英語力を発揮できるようになります。言い換えれば「過小評価」されなくなるのです。
なお、これはいわゆる「受験テクニック」ではありません。受験テクニックとは自分の持っている力以上のスコアを出すためのものです。
しかし、受験テクニックだけで200点あがることはありません。せいぜい50点ぐらいです。TOEICはそこまで欠陥のある試験ではありません。従って、TOEICは受験テクニックだけで乗り越えることはできません。地道な英語力の向上が必要になります。
もっとも、受験テクニックだけでスコアを上げても実務では何の役にも立たちません。後で後悔するだけです。メッキはいつか必ず剥がれ落ちます。永久不滅の純金の英語力を身につけて、はじめて自身の人生を黄金色に飾ることができるのです。