TOEIC … 目標と学習プランの設定
TOEICスコアアップは一種のプロジェクトのようなものです。限られた時間と予算の中で成果を上げなければなりません。そして、プロジェクトである以上、そこには明確な目的観に基づく合理的な学習プランが必要になります。
目的が曖昧な状態で学習しても失敗するのは目に見えています。まずは明確な目的意識を持ってください。
TOEICは特にビジネス界において、社員や求職者の英語力を測る手段として広く利用されていますので、ここではまずビジネスマンを例に考えてみます。
目的観 --- 何のためのTOEIC受験か
目的を明確にすると、自分にどれだけの時間的猶予があるのかを知ることができます。
社会人だったら、「何歳までにどのランクまで昇進したい」とか、「30までに海外赴任したい」とか、「28までに転職したい」等でしょうか。
時間的な猶予がある場合はいいのですが、時間的に厳しい場合はそれなりの覚悟と、場合によってはそれなりの出費が必要になります。
ここで言う出費とは時間的猶予がある場合は利用しなくてもいいようなサービスを利用するために発生するものです。お金で時間を買うと思ってください。
なお、この話については「英語ことはじめ」の「有料と無料」で論じていますので、合わせてご参照ください。
また、翻訳や通訳など語学専門職を目指す方の場合は、TOEICのスコアはあくまで参考程度に考えた方がいいです。
いくらスコアが高くても実力がなければ意味がないので、あまりテクニックに走らないようにすべきだと思います。
タイムテーブルの設定
目的の設定といっても、ただ漠然と「2年後までに800点」といった設定方法ではあまり意味がありません。もう少し細かく設定した方がいいと思います。
TOEICの場合は大きくリスニングセッションとリーディングセッションに分かれていますので、それぞれに目標のスコアを設定する方がいいでしょう。
また、期間別にリスニングを重点的に、あるいはリーディングを重点的に行う方法も学習にメリハリが出るので有効です。
自分の現在の実力を知る
言うまでもありませんが、学習プランを立てるにはスタート地点になる自分の現在の実力を知ることが不可欠です。市販の模試でもいいのですが、個人的にはやはり実際の試験を受けてみることをお勧めします。
なお、初めて試験を受ける方は、受験前に必ず市販の模試などで試験の形式を掴んでおいてください。
TOEICは英検や大学入試等とはかなり違ったコンセプトに基づいて設計されておりますので、事前に模試などで多少は慣れておかないとスコアが伸びません。
過小評価されたスコアに基づいて計画を立てるのは結果として非効率です。
得手不得手を確認する
TOEICは問題を非公開としているので、試験終了後問題用紙は回収されてしまいます。
受験者に知らされるのはスコアのみなので、本番の試験でどこをどのように間違えたのか確認することはできません。
そのため、自分の得意なPartと苦手なPartを確認するためには、市販の模試を使用するしかありません。
なお、模試を購入する上で注意しなければならないのが市販の模試の質についてです。
TOEICの模試はたくさん販売されていますが、中には品質に問題があるものもあります。最もよく見かけるパターンとして、いたずらに難易度を上げているものもあります。
これはおそらく難易度の高いものに慣れた方が試験には有利、という、言わば「大リーグ養成ギブス」効果を狙ったものでしょうが、このような模試教材はお勧めしません。模試である以上、本番の難易度に近いものがより好ましいです。
といっても本屋で立ち読みしたぐらいでは区別がつかないでしょうから、私が実際に使用した模試の中からおすすめのものを一冊ご紹介します。
『TOEICテスト完全模擬問題集』
三枝幸夫監修 ジャパンタイムズ/国際コミュニケーションズ共編
この本の良いところは実力分析に力を割いているところです。掲載問題数を競うあまり模擬問題を提供するだけで終わっている問題集が多い中で、このような書籍の存在はたいへん貴重です。
この書籍では、パート別に正解率を出し、それを過去の受験データと照らし合わせることで、学習者のスコアの範囲を測定するという手法を取っています。
過去のデータを照合する方法を採用しているので、問題作成者・出版社による独自基準に基づくスコア予測に比べ、より正確な数字を算出できるよう工夫されています。
また、ただ単にスコアを算定するだけではなく、実力診断方法として「状況判断力」「集中力」「生活英語力」「文法力・時制判断力」から診断するという独自の手法を用いています。
そしてこの診断結果から学習者に具体的な学習法のアドバイスを提供しています。
さらに、「ワンランク上を目指す学習法」として、リスニング・リーディングについてそれぞれ
リスニング
- 状況判断力を強化するトレーニング
- 集中力を強化するトレーニング
- 生活英語力を強化するトレーニング
リーディング
- 状況判断力と方向性を強化するトレーニング
- 生活英語力を強化するトレーニング
- 語彙と文法を強化するトレーニング
- 持久力を強化するトレーニング
というテーマ別のトレーニングが用意されています。
切り口が非常に斬新で他に類似のない模擬問題集なので、この問題集は是非一度試されることをおすすめします。
模試における注意点
模試を行う際に注意しておいてもらいたいことがあります。それは答えが全く分からず勘で答えた問題にチェックを入れておくことです。
本番の試験では「運も実力のうち」ですが、模試で実力分析を行うときはなるべく本来の実力を測りたいので、できるかぎりこのような「運」の部分は省いて評価したいのです。
回答終了後、まずは勘で解いた問題を不正解とみなして集計してください。その後勘で解いた問題の正解率もみてください。
模試結果分析
模試の次は結果分析です。学習計画は分析結果に基づいて作成します。
TOEICは大きくリスニングとリーディングに分かれていますので、まずこの点から考えていきたいと思います。
リスニングのスコアがリーディングに比べ高い場合
学校英語ではリスニングはほとんど練習しないので、リスニングに対して苦手意識をもっている方も多いかと思いますが、TOEICではリスニングパートのスコアは総じてリーディングより高くなる傾向があります。
もちろん過度に差がある場合は問題ですが、ある程度リスニングのスコアが高い方が「正常な」状態です。
過度な差がある場合はリーディング学習を徹底して行う必要があります。リーディングは大きく分けて文法と読解に分かれますので、パート別の分析結果に合わせて学習法を構築していきます。詳しくはリーディングパート攻略の部分で解説します。
リーディングのスコアがリスニングに比べて高い場合
先ほどと反対の場合です。リスニングが高い方が正常というからには、この状態は明らかに「異常」です。
しかし、この「異常」な状態の中に金の卵が潜んでいる可能性があります。
学校英語は文法偏重的なところがあるので、学校英語のなかで優等生だった方ほどリーディングの成績が良くなります。
この場合リスニングができないのは英語力がないからできないのではなく、偏った学習をしてきたからできないのです。
このタイプの場合、この偏りを修正するだけでリスニングパートの得点が跳ね上がることがあります。
いままでおろそかにされてきたリスニングを徹底して行うことで、本来持っている英語力が顕在化するのです。
一般的にリスニング力はリーディング力に比べ伸びやすいものです。私もリスニングのスコアは跳ね上がることがありましたが、リーディングのスコアはじわりじわりとしか上昇しませんでした。
なお、リスニングは4パートに分かれていて、基本的にはパートを追うにしたがって難易度が高くなります。
リスニング力分析という点から言うと、特に注目すべきパートは2と4になります。この点につきましてはリスニング攻略の部分で解説したいと思います。
リスニングとリーディングのスコアが同じくらいの場合
リスニングが多少高い方が正常と言うことは、リスニングについてはまだ伸びる可能性があります。
リーディングの方が高い場合ほどではないでしょうが、それでも短期間で50点から100点ぐらいは伸びるかもしれません。
短期間でスコアを上昇させなければいけない、あるいはもう少しで要求されているスコアをクリアできる、という方は、リスニングを重点的に行ってください。