TOEICリスニング、その傾向と対策
TOEICリスニングパートの傾向と対策について考える前に、まずTOEICで必要とされるリスニング力について考えてみたいと思います。
TOEICはTest of English for International Communicationという名前が表しているように、コミュニケーションのための英語というコンセプトに基づいて開発されています。
このため、TOEICのリスニングで要求されるリスニング力は、日常のコミュニケーションに必要になるリスニング力とほぼ同様の性質をもつものとなっています。
TOEICのリスニングとコミュニケーションに必要になるリスニング
日常のコミュニケーションに必要になるリスニング力というと漠然としてしまうのでもう少し具体的に表現すると、コミュニケーションに必要になるリスニング力とは内容の要点を正確に把握でき、かつそれに対してすばやく応答できるかどうか、というものです。
コミュニケーションを取るには必ずしも一字一句聞きとる必要はありません。それよりも、相手の発言の意図や要点をすばやく聴き取ることが大切です。
会話の際返答するのに1分も2分もかかっていたら、実務の現場ではコミュニケーションとしては成り立たないからです。
TOEICのリスニングで時間当たりの問題数が多くなっているのはこの能力に比重をおいているためだと思われます。
このため、TOEICのリスニングでは英語を英語のまま認識し、処理していく必要があります。学校英語風の翻訳型ではとても太刀打ちできないためです。
英語を英語のまま考えることは難しいと思われがちですが、決してそんなことはありません。
この件については「英語脳」で詳述していますので、別途ご参照ください。
TOEICリスニング各パートの特徴
次にリスニング各パート別に考えていきます。
リスニングは4パートに分かれていて、受験者のリスニング力をそれぞれ別の角度から測定するよう設計されています。
Part1やPart2では発音の紛らわしい単語による引っ掛け問題が多く含まれます。
また、Part2では5W1Hや時制など、コミュニケーションを取る上で重要になる要素が重視されています。
Part3では会話から話者自身や話者が置かれている状況について推測を加えるような問題が多数含まれています。
Part4では文章の中から要点を聴き出すことが中心となります。また、Part3とPart4では、日付・期限や時刻にまつわる設題や、言い換え表現を問う問題が多く含まれています。
これらはすべて実際のコミュニケーションで重要になるものばかりです。TOEICリスニング対策のための学習は、コミュニケーション力を高めるための学習といっても過言ではないと思います。
この特徴から考えても、英会話スクールに通うのはTOEIC(特にリスニングパート)である程度のスコアを取得してからでもよいと私は考えています。
いくら会話力に自信があると言っても、TOEICのリスニングスコアが低い場合は、的確なコミュニケーションが取れているとは言いがたいためです。
TOEICリスニングパートの「速度」と難易度
TOEICのリスニングパートは難しいと思われがちですが、実際に使用されている文法及び語彙にはそれほど難しいものは含まれていません。
一般にTOEICのリスニングが難しいとされているのは、おそらく「速度」が原因になっているものと私は考えています。
TOEICリスニングパートは「速い」のか
確かに、TOEICのリスニングパートでは速度が要求されます。ただし、ここで言っている「速度」とは、文章を読み上げるスピードではありません。
ここで言う「速度」とは、問題から問題へ移る速度が速いということです。問題と問題の間隔が短いのです。
TOEICリスニングパートの音声そのものの速度は何の変哲もない速度です。これが速いように聞こえる場合は、受験テクニックに走る前にリスニング力そのものの底上げが必要です。
TOEICリスニングパートの比重
一般にTOEICはリスニングの比重が大きいと言われています。
テストが大きく分けてリスニングとリーディングに分かれており、リスニングだけでスコアの50%を占めているのがその根拠として挙げられています。
しかし、私はこの考えに100%同調するものではありません。
リスニングの比重が高くなっているとは思いますが、配点の50%を占めるTOEICリスニングパートの中に、リスニング以外の要素も含まれているからです。
TOEICリスニングパートの中の非リスニング要素
TOEIC公式サイトでは、それぞれのPartについて下記のように説明されています。
- Part1 写真描写問題 20問
- 1枚の写真について4つの短い説明文が1度だけ放送される。説明文は問題用紙には印刷されていない。4つのうち、写真を最も的確に描写しているものを選んで解答用紙にマークする。
- Part2 応答問題 30問
- 1つの質問とそれに対する3つの答えがそれぞれ1度だけ放送される。印刷はされていない。質問に対して最もふさわしい答えを選び解答用紙にマークする。
- Part3 会話問題 30問
- 2人の人物による会話が1度だけ放送される。印刷はされていない。会話を聞いて問題用紙に印刷された質問と解答を読み、4つの答えの中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする。
- Part4 説明文問題 20問
- アナウンスやナレーションのようなミニ・トークが1度だけ放送される。印刷はされていない。各トークを聞いて問題用紙に印刷された質問と解答を読み、4つの答えの中から最も適当なものを選び解答用紙にマークする。各トークには質問が数問ずつある。
このうち、Part1とPart2は純粋なリスニングだけの試験です。ところが、Part3とPart4は「印刷された質問と解答を読み」とあるように、解答するには英文を読む必要があります。
さきほどTOEICのリスニングが難しく感じる原因として、「問題と問題の間隔が短い」ことを挙げました。
そして実際に短く感じるパートは、この「印刷された質問と解答」を読む必要のあるPart3とPart4です。
つまるところ、解答するためには短時間で英文を読まなければいけないから難しく感じるのです。必ずしもリスニングそのものが難しいわけではありません。
Part3とPart4が苦手という人は、リスニングパートの英文の速読ができないことが原因になっている可能性があります。
このため、リスニングのPart3とPart4のスコアが低い場合、リスニング学習と平行して英文速読訓練を行う必要があります。
いくら聴き取る能力が高くなっても、早く読むことができなければTOEICのリスニングでスコアを上げることはできないのです。