避けられない記憶の原理
単語学習の試行錯誤を続ける中で気づいたこととは、「覚えたものは忘れる」ということです。(まだウィンドウを閉じないでください。続きがあります。)
覚えたものはいつか必ず忘れます。これは人間の生理現象で、ごく当たり前のことです。これに逆らって単語を暗記しようとしているから、いつまでたっても単語を覚えられないのです。
ではどうすればいいのでしょうか。誰の言葉か忘れましたが、「単語は忘れるもの、忘れる以上に覚えれば語彙力は増やせる」といった内容の言葉を聞いたことがあります。
この言葉の通り、ひたすら覚え続けるしかないのでしょうか。
私に言わせれば、これほどばかげた理屈はありません。
単語の暗記という一部の英語マニアしか楽しむことができないものを、好きでやっている訳でもない人に押しつけることそのものが間違っています。この発言をした人もおそらく英語マニアなのでしょう。
彼らには英語嫌いの気持ちは分かりません。誰もが好きでやっているわけではないのです。
それだけではありません。語学を堪能することは非常に時間を食う道楽で、忙しい現代人の誰もが享受できる娯楽ではありません。
永遠に単語を覚え続けるなどという作業に生涯を捧げるほど暇ではありません。
「絶対に何らかの方法があるはず」
この確信から、より洗練された単語学習法について考え続けました。確信というよりも、
「そうでなければ困る。もう二度と中国語の時の苦い経験を繰り返したくない、もう若くもないし」
という思いでいっぱいでした。
そして、単語の学習と人間の記憶について思考を重ねる中で、語彙学習に利用できそうな人間の記憶の習性が見えてきました。
3つの要素
人間は覚えた先から忘れていきます。いやになるぐらい忘れます。100個単語を覚えたのに、1ヶ月後チェックしてみたら3つしか覚えていなかったりすると、さすがにへこみます。ところが、いろいろな記憶をたどってみると、いつまでたっても忘れていないものがあります。
例えば過去に見た映画です。印象に残っている映画の場面は、俳優のセリフと共にしっかりと頭に残っています。別に覚えるつもりでみたわけではないのですが、10年前に見たものでも、頭の中で映像を鮮明に再現することができます。
次に理解して覚えたものもしっかりと頭の中に残っています。私は歴史が好きだったのでこれを例にしますと、歴史上の出来事の年号は忘れてしまっていますが、一方でなぜそれが起こったかという話はよく覚えています。短い年号の数字より、王朝が滅びた理由の方が記憶に残っているのです。
そしてもう一つ、日頃から使っているものは忘れません。またそれだけではなく、ある程度使い続けたものは使わなくなっても長期間記憶に残っています。 例えば、英語の「is」です。中学一年の初めの頃に習います。
しかし、社会に出て、英語を全く使わない環境に長くいても、「is」は覚えています。これは、「is」があまりにも頻繁に使われていたので、自然と記憶に残っているのです。
これら「イメージ」「理解」「使用」(※補足:英語を「使う」とは)の三要素を活かすことが、短期間で語彙力を増強するためには不可欠です。